労働基準監督署の調査とは?調査の種類や調査内容を解説
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長時間残業による労災やブラック企業問題など、労働環境を巡るトラブルは尽きることがありません。そのような問題を事前に摘み取るためにも、労働基準監督官の調査が行われています。これにより企業のイメージダウンや社員の退職にもつながるため、企業の労務管理者にとっては、その内容は気になるものではないでしょうか。そこで今回は、労働基準監督官の調査とはどのようなものなのか、調査の流れや種類、調査内容についてご紹介します。
目次
労働基準監督署の調査の流れ
労働基準監督署の調査は、臨検監督とも呼ばれ、予告なく事業所に労働基準監督官がやってくるパターンと、事前に連絡して事業所に来るパターン、出頭要求書が届く3つのパターンがあります。
抜き打ちで調査しに来た場合
労働基準監督官が予告なく、抜き打ちで事業所に調査しに来た場合でも、原則として調査を拒否することはできません。予告なく監督官がきた場合は、ありのままの状態を確認する目的で来ていると考えられます。
事前予告があった場合
事前予告を伝える書面には、調査が予定されている日時や調査当日に準備しておく書類などが記載されているので、前もって帳簿や書類を用意しておきましょう。
出頭要求書が届いた場合
出頭要求書が届いた場合は、労働基準監督署へ帳簿書類を持参して出頭します。
調査は、監督官が調査内容や、事業内容などに合わせて行うので、決められているものがあるわけではありません。主に、労働関係帳簿の確認、事業主や担当責任者へのヒアリング、事業所内の立ち入りや労働者へのヒアリングを行い、改善指導や指示が行われています。労働基準法により、臨検監督を拒否したり、虚偽内容を伝えたりした場合などには、30万円以下の罰金に処せられることもあるので、誠実に対応しましょう。
労働基準監督署の調査の目的
労働基準監督署の調査の目的は、労働基準法違反がないか確認し、違反があった場合に是正することです。
例えば、就業規則を作成、従業員へ周知し、正しく運用されているか、労働基準法に定められた各種届け出や労働条件の通知を行っているか、出勤簿や賃金台帳などの帳簿類は作成されているかなどを確認しています。他にも、各種帳簿に基づき、割増賃金が支払われているか、シフト管理ができているか、健康診断を実施しているかなどを見ています。
調査の結果、労働基準法違反が見つかった場合には、是正勧告書が交付されるので、期日までに法違反の是正を行いましょう。法違反ではないが、改善した方がいいと判断されると、指導票が交付されます。指導票の交付も是正勧告と同じく行政指導なので、期日までに改善状況を報告する必要があります。
いずれにしても、定められた期日までに対応しないと再監督になるので、早めに対応しましょう。
労働基準監督署の調査の種類
労働基準監督署は、労働基準法違反の有無を調査するため、会社に立ち入って調査し、改善指導をする権限を持っています。労働基準監督署の調査は、定期監督、申告監督、災害時監督、再監督の4種類に分別されています。
定期監督
定期監督は、労働基準監督署が予定を組み、定期的に計画して実施している調査です。無作為に調査対象となる会社を選んで調査しています。
申告監督
申告監督は、従業員からの申告、いわゆる告発に基づき調査を行うものです。申告のあった内容を確認することが目的で、申告した従業員の氏名は教えません。
災害時監督
災害時監督は、一定規模以上の労働災害があった場合に、労災の原因究明や再発防止のために実施します。
再監督
再監督は、労働監督署から是正勧告を受けた後に実施される監督です。違反項目の是正ができているか確認し、指定期日までに是正報告書が提出されない場合にも行われています。
労働基準監督署の調査で確認される資料
労働基準監督署の調査で、要求される帳簿や書類は個々の状況によって異なります。一般的には、通知書面で指定されたものを準備しますが、確認される書類を知り、日頃から準備しておくことが大切です。代表的な資料をご紹介しましょう。
- 会社組織図
- 就業規則
- 勤怠状況が分かる、出勤簿やタイムカードなど
- 賃金台帳
- 労働者名簿
- 有給休暇の取得状況管理資料
- 健康診断個人票
- 総括安全衛生管理者や産業医の選任状況が分かる資料
- 労働基準法で定められた各種協定や届け出の資料
調査の段階で、追加書類の提示を求められることもあります。資料の内容が分かる人事担当者と確認しておきましょう
労基法違反で指摘の多い内容
労働基準監督年報で、労働基準監督署の調査で指摘の多い労働基準法違反が公開されています。定期監督や災害時監督と申告監督では、指摘の多い内容は異なっています。定期監督や災害時監督で指摘されやすい内容は、労働時間、安全基準、割増賃金、健康診断、労働条件の明示です。一方、従業員からの告発により実施される申告監督は、賃金不払い、解雇、最低賃金法の順に指摘されています。特に賃金不払いは、約8割と圧倒的に多いのが特徴です。厚生労働省のホームページで公開されているので、確認しておくと安心でしょう。
労務管理チェックポイント
では、労働基準監督署の調査は具体的にどうやって対策すればいいのでしょうか。労働基準監督署の調査にも対応できる労務管理ができているか、一度確認してみましょう。主なポイントは、労働条件、組織・人事、危機管理です。
労働条件
労働時間の記録、有給休暇の取得状況など、資料の整備や管理ができているか確認します。労働時間の適切な把握のため、勤怠管理システムを利用するのもひとつの手段です。賃金面では、残業や割増賃金や退職金が支払われているか、管理できているかチェックしましょう。
組織・人事考課
人事の昇格、昇給、評価制度や賃金テーブルの整備ができているか確認します。また、就業規則を作成し周知徹底できているか、雇用契約や解雇、36協定などの整備、給与計算の資料が調っているかチェックしましょう。
危機管理
危機管理面では、健康診断や安全衛生管理体制、安全衛生教育、労災といった危機管理ができているか確認します。社会保険の支払い管理や、セクハラ、解雇についての制度運用も併せてチェックしましょう。
いつ監督に入られても問題のない体制作り
労働基準監督官は、どのような規模、事業内容の会社でも調査に入っています。そのため、日頃から、いつ臨検監督に入られても問題のない体制作りをしておくことが大切です。
また、後々問題とならないよう、従業員とコミュニケーションを取り、問題の改善に努めることも重要です。適切な労働管理、運営ができていれば、臨検調査にも慌てることもなく、冷静に対応できるでしょう。